一般に、自意識は意識をベースとして発生し、意識の一部であると考えられている。また、意識が自意識に先んじて発生し、自意識は意識に付随した心的現象であるとも考えられている。しかし、自意識は(意識のない)夢の中にも存在し、意識との間に含意関係はない。つまり、自意識は意識とは全く別の発生メカニズムを持っている。
自意識を取り上げる前に、意識を取り上げた方がわかりやすいのではないかと思われるかも知れない。しかし、意識の機能に比べ、自意識の機能の方が広いので、自意識の輪郭がはっきりすれば、自ずと意識の正体もつかみやすくなる。基本的な意識の機能は、様々な現象に関する理解や判断にある。それをどのように理解し、判断するか?もし、この意識の機能のメカニズムを正確に知りたければ、意識が機能しやすくなるように準備をし、しかも整理する自意識の機能をはっきりさせておいた方がよい。つまり、自意識はどういう疑問や不快を意識に提出する(気づかせる)か?そして、その後、意識はどのように対応するか?自意識は意識が機能する前後の具体的な内容と、そのプロセスを示す役割を担っている。
生体内において、類似的、反復的な刺激伝達は絶えず発生するので、「集中・直観・洞察」という一連の心的現象の中で、意識と自意識の共同作業は、多角的な見地から、様々な種類の課題に対して、ほとんど同時に並行して行なわれる場合が多い。そうした状況の中において、つまり、忙しく仕事をしている多くの時間において、我々はいま意識が機能しているとか、いま自意識が機能しているとか、そういうことすら考えていない。作業に没頭して疲れてくれば、その時に我々は意識のことを思うだろうし、あるいは何か話していて嫌な気持ちになれば、その時に自意識のことを思うかも知れない。それゆえ(集中して)夢中になっている間、意識でさえ無意識的であると言える。
精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。