荒廃(人格崩壊)

 統合失調症に見られる緊張病や破瓜病は、未だ人格の荒廃を意味しない。つまり、昏迷や興奮、無為や徘徊、途絶や滅裂などが観察されても、厳密にはそれをもって「人格は崩壊した」と言わない。確かに、闘病生活が長ければ、荒廃(人格崩壊)しやすい。しかし、それだけでは不十分である。荒廃(人格崩壊)には、処罰的自己による残忍さの欠如という条件が必要である。

 荒廃(人格崩壊)とは「処罰的自己の欠乏状態」である。処罰的自己は、しばしば「殺しの喜び」を体験させる残忍な情動特性を有している。その残忍な特性が失われた時、人格が崩壊する。しかし、このように主張すると、元来、ヒトは残忍な存在かという問いが発生する。これに対して、積極的に肯定したいとは思わないが、否定する根拠もない。ただし、そうした心的状況は、未だ人間が不快ー防衛系しか持ち合わせていなかった頃のことであろうと考えられる。その後、ヒトは不快ー制御系を持つようになった。

 精神病状態では、不快ー防衛系が機能し、不快ー制御系は機能しない。しかし、たとえ精神病状態であっても、すでに脳内には不快ー制御系は配備されており、その機能不全に陥っているに過ぎない。つまり、不快ー防衛系が過剰に活性化している。ところが、そうした状態が長く続くと、その不快ー防衛系でさえも十分に機能しなくなる。統合失調症では、特に慢性期において、処罰的自己の活性化は極めて乏しい。たとえ処罰的自己が活性化しても、すぐに投影性同一視や病的同一化によって、処罰的対象の活性化に変わってしまう。したがって、不快の逆転送ルートもまた活性化しなくなる。このような心的状況では、処罰的自己を除く三つの防衛因子を中心とした心的活動しか展開されなくなり、荒廃(人格崩壊)が出現するようになる。

 

                      様々な精神症状の精神力動

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精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。

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