転移には二通りの意味がある。ひとつは癌の転移であり、もうひとつは感情の転移である。癌の転移は致命的であるが、感情の転移は救命的である。この場合、大人になった現在の人間関係の中で、幼少時に体験した不快な思いを(無意識的に)再燃させるような特殊な関係を作り出し、それに心が捉われるようになる。しかも、それは相手の気持ちとあまり関係なく発生するので、相手には歓迎されるよりも、むしろ迷惑がられる場合が多い。こうした幼少時期に体験すべき感情を、現在の大人の生活に持ち込む場合、これを(感情)転移と言う。この転移が実社会の人間関係の中で「無構造」に存在すると、それは決して良い人間関係を育まない。そこで、このような関係を(精神分析的な)治療構造の中で収め、その中で解消していこうとする方法論が精神分析技法論である。転移を起こす感情はたくさんあるが、たとえば、上記の「甘え(依存)」は「しがみつき」に「ぐずり」は「催促」に発展しやすい。その他にも、様々な感情が転移を起こす。(対象不快因子や対象防衛因子が転移を起こす。)
精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。