自己愛と対象愛

 もし高揚感や一体感、そしてそうした思いを誘う憧憬など、これらの思いが本当に失われてしまうとすれば、我々の思いはどこへ行ってしまうのだろうか? むろん、いかなる思いも我々の心の中に発生し、それが様々なプロセスを変遷しながら、喜びや悔しさを体験する。しかし、今のような情勢では、様々な心性のプロセスは流れてしまい、何も体験しないまま、たとえようのない日々を重ねていくことになる。しかし、何も体験することができなくなれば、我々の心の営みは、どうなってしまうのか? どんな時にも心はあるので、たとえば、ひきこもってしまうとか、あるいは、打ちひしがれてしまうとか、そんな思いが延々と続くことになるだろう。このように、多くの人は困惑し、どうしようもなさを表現する術さえ持てない状態に陥ってしまう。

 このような時に、つまり、たとえようのない思いを抽象的に表現し評価するために、精神分析は自己愛と対象愛という用語を準備している。精神分析の専門家であれば、たとえ今のような先の見えない状況にあっても、自己愛や対象愛という用語を用いて、勝手に楽しく議論したりすることのできる「無味乾燥な喜び」を持つことができる。上記の文脈の中での高揚感には自己愛が欠かせないだろうし、一体感には対象愛が欠かせないだろう。人生を楽しむためには、自己愛も対象愛も欠かせない。フロイトは自己愛をあまり良いものとは考えず、対象愛を良いものとして考えた。ところが、その後、コフートが自己愛もまた良いものであると主張し、フロイトに反対した。そして、今は「肥大する自己愛と、損なわれる対象愛」の時期であると理解することができる。

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精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。

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