この度、著書「精神分析統合理論」を発刊しました。
この本は、心と脳について研究している人達、治療能力の向上をめざす人達を対象に書かれたものです。心の動き(精神力動)を脳研究と照合することによって、刺激伝達機能網を作成し、それに基づいて諸々の精神現象を解明し、治療論を確立しています。したがって、従来の研究とは全く異なる次元の、画期的な内容が含まれています。
第一部の「情動制御理論」では、心の健康と病気を決定付ける精神力動の発見を、脳研究と照合し、情動脳における刺激伝達の法則性について明らかにし、ほとんどすべての精神現象を説明しています。その中でもとりわけ重要なのは、精神病の成因を解明し、その根治療法を確立している部分です。
第二部の「精神現象生成理論」では、意識や自我意識の発生メカニズムの解明、人格の交代に関する解明、さとりに関する科学的な解明など、盛り沢山の内容が収められています。
第三部の「症例研究」では、許しの解明につながった症例、新しい人格障害である強迫不全性人格障害の症例、躁うつ病や統合失調症の根治療法(治療期間は5〜6年、治療時間は1,200〜1,300時間)などが収められています。
かなり難しく、相当な読解力を必要とする内容です。昨今、心に関する書物も一般書と同様、気軽に読める内容が求められる傾向にありますが、専門家のみなさんにとって、この本は必読書であると確信いたします。
『精神分析統合理論』 総ページ数 831ページ (+2ページ)
定価 「本体20,000円+税」
【目次 】
第一部 情動制御理論
序章一(入門書としての序文)
序章二(専門家のための序文)
第一章 苦悩とは何か?
第二章 基本的概念
マゾキズムとナルシシズム、許し、「許しの環」と「救いの環」
様々な構成因子:マゾキズム系構成因子、ナルシシズム系構成因子
快・不快原則、ナルシシズム系とマゾキズム系の連動性
第三章 精神構造の基本型
第四章 情動系に関する脳研究
第五章 葛藤の構造
神経症の葛藤、病的状態とその悪性化、
防衛の流動化
第六章 防衛機制
妥協案の提出、防衛機制、分裂
第七章 様々な刺激伝達経路
救いの環、許しの環、
ナルシシズム系順転+不快の快変換ルート、
ナルシシズム系順転+不快の逆転送ルート、
ナルシシズム系(両方向性)病的同一化、
マゾキズム系(両方向性)病的同一化、
自己愛型閉鎖回路、依存型閉鎖回路(巻き込み拘束)、
巻き込み反撃、巻き込み謝罪、
マゾキズム系閉鎖回路、悪性サイクル、
刺激伝達の「分散」現象と「衝突」現象、
強迫と強迫崩れ、回避性と反社会性、 解離、
不快因子同士の連動性、倒錯的思考、自責回路
第八章 人格傾向
ひきこもり(退却)、期待(当て)、陶酔(惚れ込み)
緊張、軽蔑と無視、後悔、依存(しがみつき、貪欲さ)
誘惑と演技性、催促、うぬぼれ(開き直り)、すなおさとまじめさ、羨望、嫉妬、羞恥心、
反社会性、移行現象に基づく人格傾向:遊びの領域、盗癖、嗜癖、儀式
第九章 症状形成
不安とそれに関連する症状群、エディプス・コンプレックス、無気力、焦燥感、身体化、情動失禁、様々な依存症、摂食障害、解離性障害、性倒錯、犯罪という症状形成、移行現象に基づく症状形成、躁状態、うつ状態、 幻覚状態、妄想状態、緊張病と破瓜病、その他
第十章 従来の定式化と私の定式化
第十一章 疾患形成
人格構造に準じた疾患形成、
様々な疾患群
精神病人格障害(躁うつ病と統合失調症)、病的人格のカテゴリー化、強迫不全性人格障害、病的人格の本型と亜型、まとめ(各病的人格障害の症候学的特徴)、防衛人格障害、神経症
第十二章 治療技法
転移と逆転移、共感と解釈、治療技法の原則、謝罪技法と優越誘導技法
第十三章 治療経過の定式化
防衛人格障害の治療
病的人格障害の治療:病的マゾキズム、病的ナルシシズム
精神病根治療法の定式化
精神病根治療法の具体的定式化
第十四章 まとめ
第二部 精神現象生成理論
序章
第一章 葛藤外領域
第二章 夢
第三章 意識
第四章 認識
第五章 概念の知覚化
第六章 自我意識
第七章 意識と自我意識との相互関係、意識の実態、意識の周辺、自我意識の種類、情動排除型自我意識、情動含有型自我意識、様々な解離型自我意識
第八章 人格の交代
私の未経験領域、心因性健忘、多重人格の発生理由、多重人格性:思考系の持つ「照合性」、多重人格の発生母体、多重人格の治療、統合失調症に見られる多重人格性
第九章 「さとり」への道
人類共有の課題、自己愛≠対象愛、タナトス期、ロゴス期
第十章 様々な「生きること」の課題
理想的対象の四段階、情動制御と認識、
存在と本質、進化と破壊、本質否定、
ヒューマニズム、現存する社会問題、
道徳(善)と(現在の)法体制 、死の問題、
性愛と自由
第十一章 まとめ
後記(Ⅰ)
第三部 症例研究
序章 症例研究の意義
読者の関心をひく内容、治療中断という苦悩、
症例研究の成果とその展望、疾患移動論
第一章 「許し-許される」関係
第二章 「弱い対象」としての機能
第三章 境界性人格障害
第四章 演技性人格障害
第五章 強迫不全性人格障害
第六章 統合失調質人格障害
第七章 統合失調型人格障害
第八章 受身的攻撃性人格障害
第九章 統合失調症
第十章 統合失調症(Ⅱ)
第十一章 躁うつ病
第十二章 各症例と定式化との照合作業
後記(Ⅱ)
補遺 : 脳研究への触手
一、 心から見た脳の神経伝達経路
二、 伝達経路と伝達物質
三、 精神療法の薬剤化
精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。