疾患移動論

 疾患移動とは、ある病態水準にある疾患群(より重篤な疾患群)が、根治療法によって、別の病態水準にある疾患群(より軽症な疾患群)に移動することを意味する。通常、この疾患移動は気質に沿って起こる。

 躁鬱病であれば、気質を規定する防衛因子は理想的自己であるから、移動する疾患群には脆弱系病的状態の四疾患群が該当する。その内訳を見ると、「気質軸」として統合失調質人格障害と統合失調型人格障害があり、「非気質軸」として妄想性人格障害と受身的攻撃性人格障害がある。

 また、統合失調症であれば、気質を規定する防衛因子は処罰的対象であるから、移動する疾患群には攻撃系病的状態の四疾患群が該当する。その内訳を見ると、気質軸として境界性人格障害と演技性人格障害があり、非気質軸として反社会性人格障害と強迫不全性人格障害がある。

 ちなみに、精神病根治療法による治療プロセスは、気質の影響を強く受けるので(つまり、気質を規定する防衛因子が強く機能するので、その系の制御システムの形成が、対側の系の制御システムよりも遅れるという事情が発生し)、躁鬱病では、救いの環に先んじて許しの環が形成され、統合失調症では、許しの環に先んじて救いの環が形成される。

 それでは、病的状態から防衛状態への疾患移動においても、気質は受け継がれるか?はっきりと受け継がれる場合もあれば、受け継がれない場合もある。その理由は二つ考えられる。ひとつは、誇大的対象の威力が増大して理想的自己の威力に匹敵したり、処罰的自己の威力が増大して処罰的対象の威力に匹敵したりする場合が生ずるからである。もうひとつは、新しく形成された制御システムが、それまでとは異なった心的活動を始めるので、たとえそれが対側の系であろうと、気質に影響するようになるからである。

 

                   精神科疾患移動論

躁鬱病→統合失調質人格障害→自己愛性人格障害

 躁鬱病から統合失調質人格障害を経て、自己愛性人格障害に到るプロセスは、精神病根治療法のひとつの典型的な治癒過程である。すでに鬱病化した躁鬱病であれば、治療的な介入によって防衛を流動化し、躁病相を経由して基本的防衛態勢(寛解期)に誘導する。その後は、精神病根治療法の定式化された八段階の治療過程に沿って、治療を進める。そして、その結果、もし許しの環が形成されれば、躁鬱病は統合失調質人格障害へと人格変化を起こす。しかし、たとえ人格変化を起こしても、根治療法は継続中なので、表層的な症状群が顕在化することは少なく、許しの環の複合化に成功し、その上で救いの環の形成に向かうことができれば、統合失調質人格障害のレベルは単に通過点となる。ただし、このプロセスの途中で治療が停滞すれば、統合失調質人格障害を中心とした脆弱系病的状態の実態が浮かび上がってくる。それゆえ、その実態を浮かび上がらせる前に、脆弱系防衛状態である自己愛性人格障害のレベルまで、治療を到達させることが肝心である。そのためにも、二人の治療者(二台のAM)が同時に二つの根治療法を行なう必要がある。

 

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統合失調症→境界性人格障害→回避性人格障害

 統合失調症から境界性人格障害を経て、回避性人格障害に到るプロセスは、精神病根治療法のひとつの典型的な治癒過程である。すでに慢性化した統合失調症であれば、治療的な介入によって防衛を流動化し、急性期を経由して基本的防衛態勢(寛解期)に誘導する。その後は、精神病根治療法の定式化された八段階の治療過程に沿って、治療を進める。そして、その結果、もし救いの環が形成されれば、統合失調症は境界性人格障害へ人格変化を起こす。しかし、たとえ人格変化を起こしても、根治療法は継続中なので、表層的な症状群が顕在化することは少なく、救いの環の複合化に成功し、その上で許しの環の形成に向かうことができれば、境界性人格障害のレベルは単に通過点となる。ただし、このプロセスの途中で治療が停滞すれば、境界性人格障害を中心とした攻撃系病的状態の実態が浮かび上がってくる。それゆえ、その実態を浮かび上がらせる前に、攻撃系防衛状態である回避性人格障害のレベルまで、治療を到達させることが肝心である。そのためにも、二人の治療者(二台のAM)が同時に二つの根治療法を行なう必要がある。

 

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非気質軸疾患群の疾患移動

 非気質軸疾患群とは、脆弱系病的状態に属する妄想性人格障害と受身的攻撃性人格障害、それに攻撃系病的状態に属する反社会性人格障害と強迫不全性人格障害である。そもそも、病的状態は精神病を前提にしているわけではない。つまり、病的状態は精神病に移行することはなく、個人の(生後の)発達と成長によって、すでに許しの環か、それとも救いの環のいずれか一方を保有している。したがって、病的状態では疾患群によって気質の勢力に斑(むら)が出る。しかし、その中でも上記の四疾患群は気質の影響をあまり受けない。なぜならば、気質に影響しない防衛因子の勢力が大きいことや、すでに形成されている制御システムによる影響が大きいからである。

 

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精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。

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