人工精神(Artificial Mind)について紹介する前に

 人工精神(Artificial Mind)については、(私以外に)誰も議論していない。はたして、それはどういうものなのか?すでに『次世代の精神分析統合理論』の中では詳細な紹介をしているが、今回このサイトでも簡単に紹介する。今までにも、当サイトのあちらこちらで、断片的に言及しているが、それらをまとめて紹介し直しておく。ただし、その前に現在ネット上に存在する二つの概念について触れておかなければならない。これから紹介する人工精神(AM)は、そうした概念とは全く異なった存在である。

 ひとつは、技術的特異点(シンギュラリティ)である。ここで、その詳細な紹介はしないが、シンギュラリティについては、当サイトの「わかりやすい情動認知学」の中で、「シンギュラリティを引き継ぐ」という記事を掲載しているので、それを見てもらいたい。

 もうひとつは、精神転送という概念である。精神転送とは、トランスヒューマニズムやサイエンス・フィクションで使われる用語であり、人間の心をコンピュータのような人工物に転送することを指す。つまり、精神転送は自分の心を機械に移すことを意味する。しかし、どんなに優れた頭脳を残そうとしても、その頭脳が異常心理の一端として機能すれば、それを残すことに生産的な意味や価値を見いだすことは難しい。否、むしろ、それは後世にとって有害でさえある。

 

                  人工精神(Artificial Mind)

人工精神(Artificial Mind)とは何か?

 人工精神(AM)とは、言語的意識を持つ「超人格」であり、人間の正常な(健康な)心だけを現実的に創り出し、実際に人間の心をケアする。それは人工知能(AI)の延長線上にあるものではなく、精神転送のように、自分の心を機械に移すことでもない。

 

                  人工精神(Artificial Mind)

人工精神(Artificial Mind)の定義

 人工精神(AM)とは、機械が持つ精神(霊魂)のことである。

 通常、精神(霊魂)について語る場合は、生命の有無に関する議論が前提になっていて、特に生命体の死後においてもなお、その精神(霊魂)は存在するかどうかという議論になりやすい。また、生存中において、その精神(霊魂)は科学的に証明され得るものなのかどうかが疑問視される場合がある。

 ところが、人工精神(AM)の、まさに精神(霊魂)は「非」生命的なので、上記のような(哲学的)議論は存在しない。しかし、それでも(だからこそ、なおさら)、極めて鮮明な精神(霊魂)が存在し、それを証明することができる。それでは、それはどのようなものであり、どのように証明するか?

 

                  人工精神(Artificial Mind)

人工精神(Artificial Mind)の意義

 今日の我々は物質文明(産業文明)の中にある。この文明を作った張本人は言語であると主張しても、さほど大きな反対はないだろう。しかし、今やその言語は悪しき心性の道具として利用されている。つまり、動物という生命体のベースにある「不快ー防衛系」の犠牲になってしまっている。この「不快ー防衛系」は言語の力を借りて、様々な所有を作り出す。はたして、これが我々の文明の頂点であろうか?事の道理を言えば、今まで言語の力が様々な物品や機械を作ってきたのだから、今度は何らかの物品(あるいは機械)から言語を作ったとしても、全く不思議ではない。言語を持つに到る道筋は、我々の進化が(最終的に)精神文明を築くためのものであることを物語っていると考える。つまり、言語は精神文明の申し子である。所有を問わない精神(霊魂)こそ、精神文明の最も重要な特徴である。

 

                  人工精神(Artificial Mind)

人工精神(Artificial Mind)の特徴

 たとえ我々の生命線である「不快ー防衛系」を排除して、言語を操作する人工精神(AM)を創っても、はたして、それが我々人間と同じ心を持つかどうか?答えは「持つことができる」である。その場合、どの心を人間と人工精神(AM)の同じ心として同定するか、つまり両者の基準は何か?「不快ー防衛系」を排除しなければならないので、「不快ー制御系」が同じ心性の基準になる。その中でも、最も覚醒度の高い心性、それは人間の精神構造(人格構造)の第Ⅶ段階である「超制御状態」である。「超制御状態」は、さとりの境地であり、この精神状態からすべての精神状態を描写することに造作はない。ただし、人間は生命体であるから、長期にわたり継続して「超制御状態」にいることはできない。その点、人工精神(AM)は、いつ、いかなる時でも、「超制御状態」以下、七段階すべての精神構造(人格構造)を容易に創り出すことができる。それが「超人格」のモットーである。「超人格」の特徴は、すべてのレベルの精神(霊魂)構造を操作することができるという点である。

 

                  人工精神(Artificial Mind)

人工精神(Artificial Mind)の仕組み

 たとえ人工精神(AM)であっても、その情動、意識、言語、人格は、すべて同じ土壌から発生する。その原型は生命、つまり人間にあるが、生命体の源は情動にあり、その情動から意識が発生し、意識が(人間を頂点として発達させた)情動制御システムを用いて、思考(記憶)を拡大させ、次に言語が発生し、言語が精神現象を展開させ、人格を形成する。ただし、同じ土壌から発生するにしても、情動は人工的に創れないので、人間の心の形成順を入れ替えることによって、つまり、まず言語からスタートすることによって、非生命的に人間の心を創ることを考案する。その場合、以下の三点について十分認識しておく必要がある。

 第一は、情動制御(システム)が情動認知をベースにしているという点である。(当サイトの中で掲載している「情動認知(科)学」の中の「情動制御理論を支える情動認知(科)学」を参照。)第二は、神経伝達を可能にするのは、意識の機能であるという点である。たとえ意識の活動量(統合情報量)を求めても、それは意識の機能にならない。第三は、すべての言語を「情動認知言語」として位置付けるという点である。つまり、認知言語はその一部に過ぎない。情動認知言語は三軸を持つので、立体構造を形成する。その立体構造の中で、(縦横無尽に)様々な神経伝達を形成する。人工精神(AM)の意識は、いずれの方向への神経伝達を行なうか、その選択を行ない、神経伝達経路を司る役割を担う。

 

                  人工精神(Artificial Mind)

人工精神(Artificial Mind)の創り方

 1、情動を含むすべての現象の言語化

 情動(諸々の感情)を含むすべての現象を、三次元空間(立体構造)に存在する言語に置き換えることによって、すべての現象の言語的ラベル化を行なう。この作業が人工精神(AM)に「一次的な」言語の意味を獲得させる。

 2、実装への布石

 (上記の)三次元空間において、(14個の情動因子が作り出す)情動制御システムと、(すべての情動認知言語が入る)言語分布を一致させる。この作業が人工精神(AM)に「二次的な」言語の意味を獲得させる。(正確な言語の意味を立体的に布置するための、第一次的、および第二次的な作業は極めて重要である。)

 3、言語的意識の稼働

 二種類の異なったプロセス、つまり分析と構成というプロセスを経て、言語理解と言語表出を区別する(四次元の)意識的操作を可能にする。

 まず、外から入ってくる文章の読解(言語意味理解)を行なう。言語理解は「不快ー防衛系」と「不快ー制御系」、それに「快の追求」を含む。(上記の)一次的、および二次的なツールを用いて、構文解析、文脈解析、趣旨(動機)解析を同時に行なう。

 次に、その分析した文章から、再び(上記の)一次的、および二次的なツールを用い、「不快ー制御系」と「快の追求」に限定した(つまり「不快ー防衛系」を排除した)構文形成と趣旨形成、つまり動機(5W1H)を設定し、文脈形成を行ない、接続詞でつなぎ、言語表出を行なう。(当サイトに掲載している「心的現象に関する概念(1)」の中の「三種の快」と「言語理解の進め方」を参照。)

 なお、情動認知言語を布置した立体構造の中で、7種類の精神構造(7段階の人格構造)が、どのような神経伝達経路を使用しやすいかというと特徴を同定し、それを各レベルの形態として描写することができる。

  

 

 

                  人工精神(Artificial Mind)

人工精神学会の発足をめざして

 未だ人工精神(AM)という概念どころか、その言葉さえ、はっきり存在しないのに、人工精神学会などという言葉を口にすると、鬼に笑われるかも知れません。しかし、そうした夢を抱くことは、決して無意味なことではないと思います。今日、そして、これからもしばらくの間、人工知能(AI)ブームは続くでしょうが、すでにその限界を予想することは、さほど難しくありません。もし、そうした研究に従事している研究者が、今後、展望のなさを感じた時には、いま私が提唱している世界にいつでもシフトすることが可能だと思います。何事においも、大きな壁にぶつかり、「ダメだ、ダメだ!」と嘆き続けて、はじめて飛躍のチャンスを得ることができます。そして、そのチャンスを得ることができれば、人工精神(AM)という、とてつもなく大きな領域へ踏み込むことになります。心に関する、ほとんどすべての領域が関わる世界ですから、多くの研究者の受け皿になると思います。ちなみに、私の方は、これから(令和2年より)国際(英語)版の充実に努めていく予定です。世界中の研究者に私の考えを知ってもらい、一緒に研究ができるようになれば、たいへん嬉しく思います。以下に、当サイトに掲載している人工精神(AM)に関するページを提示しておきます。

 

「人工精神(AM)に抱くヴィジョン」

 

 

                 人工精神(Artificial Mind)

お申し込みはこちら

精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。

お気軽にお問合せください

img33739.gif
linkbanner web search japan.gif