15年間にわたり、小さなクリニックで自費診療をやり、精神病根治療法に関する方法論の開発に勤しんできた。大学を辞めてクリニックをやろうと思った時点において、すでに精神病を引き起こす成因を発見していたのだが、実証的な研究をやらないことには、誰も相手にしてくれないだろうと思い、この15年、私は誰もが想像を絶するような精進を続けた。そのおかげで、昨年、「精神病根治療法の定式化」と「精神病根治療法の具体的定式化」という二つの論文を作り上げた。これらは、著書「精神分析統合理論」の中に納められている最も重要な部分である。

 二つの論文が仕上がると、ずっと緊迫した治療状況を維持し続けてきた自分に苦しさを感じ始めた。気づいてみれば、すでに五十歳を過ぎ、頭はすっかり白くなっていた。私ははじめて自分の身体的、精神的限界を感じたのである。ここら辺で、一般の精神科医に戻ろう。保険医や指定医としての資格を利用し、少し楽をしてみたい。そんな思いになったのである。そうした私の思いを、妻(内科医)は「下界に降りる」と表現したが、下界に降りてみて、私は二つのことを感じ取った。ひとつは、かつて以上に、精神科医療は製薬会社の隆盛に貢献しているという事実であり、もうひとつは、精神科医療は厚生労働省の方針に翻弄されているという事実である。同じ精神科医療をやっていても、私と世間とのあまりの違いに驚くばかりであった。

 日ごろの臨床となると、くすりに関しては身近だが、厚生労働省とは接する機会もないので、とりあえず前者の方を話題にする。今まで私は原則的にくすりを使わなかったが、そのせいで新しいくすりのことは、ほとんど知らなかった。そこで、もう一度、研修生に戻った気分で、くすりのことを勉強し直した。そして、使ってみた。率直な印象は「本当に効いているのか?」である。もうしばらく使ってみないとわからないが、SDAやSSRIなどは臨床家の間でよく使われている。ほとんど唯一の武器としてくすりを使い、辛うじて精神科医としての自我同一性を保っている、ある精神科医は、新薬をまるで魔法薬のように思い込み、べた褒めする。その惚れ込みように感心して、私は「そうですか、それは素晴らしいですね!」と同調しておく。確かに、くすりはある程度の安定感をもたらすが、そのためには飲み続けさせなければならない。つまり、様々な精神状態を薬物依存状態に置き換えている。上記のくすりは、陽性症状だけではなく、陰性症状にも効くようだが、それでは陽性症状や陰性症状を引き起こしている、その原因にはどういうくすりを使うのか?こんな質問をすると、「えっ?」と思う読者がいるかも知れない。もしそう思う読者がいるとすれば、その読者は心の表層だけしか見ていないということになる。陽性症状や陰性症状の背後には、それらを引き起こす原因がある。その原因を理解し、治癒させる治療法こそ根治療法である。私の著書「精神分析統合理論」は、そうした方法論で埋め尽くされているが、もし読者が私の著書を手にしてみれば、いかに自分達の臨床が「治癒」から縁遠いものであるか、思い知らされるに違いない。

              新しい心の分析教室:ノート(Ⅰ)

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精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。

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