巷でよく使用されるストレスという言葉は、外因(環境要因)によって発生する疲労や身体的な異常(自律神経失調症など)を指す場合が多いが、ストレスが精神障害に直結する場合もあれば、そうでない場合もある。たとえば、PTSD(外傷後ストレス障害)の場合は、心的外傷というストレスが解離性障害を中心とした精神障害を起こしてくる。しかし、多くの場合に使用するストレスという言葉は、どちらかと言うと軽い精神的負担をきたす場合に使用されるが、ストレスが心因(葛藤)を発生させる契機になる場合もある。それでは、ストレスがいわゆる内因性精神障害、つまり精神病を発生させることはあるか?内因という用語には(未だはっきりしないが)遺伝的、身体的要因が存在するという想定がある。それゆえ、ストレスが精神病の発生に直結することはない。確かに、情動制御の形成においても、環境因だけではなく、遺伝因もまた否定できないので、内因という用語の存在がすべて否定されたわけではない。最近の動向では、何でもかんでもストレスであると決めつけがちであるが、ストレスという用語は、わかっていることでもわからなくしてしまう傾向を持つので、注意を要する。

  パニックという用語も、ひとつの流行である。一般に、繰り返される心的外傷をパニックとは言わず、繰り返される不安(発作)をパニックと呼ぶことが多い。つまり、不安神経症を中心とした症状群を発生させる契機をパニックと呼ぶ。パニックを精神力動的に(神経伝達の特徴として)捉えると、多くの場合、脆弱系に自己解離が生じている。すでに紹介したように、自己解離には自然漏洩と強制漏洩が存在するが、パニックの発生は強制漏洩である。(通常、心的外傷の場合は、強制漏洩の他に、対象防衛因子である誇大的対象や処罰的対象もまた機能しているが、パニックのような不安発作の場合は、弱い自己を活性化させる強制漏洩だけの場合が多い。)たとえば、広場や高所、それに閉所などが強制漏洩を起こす外因になりうる。最近では、あまり神経症という言葉を使用せずに、ストレスやパニックなどという言葉を使用するようであるが、言葉を変えたからといって、その発生メカニズムが変わるわけではない。むろん、使いやすい言葉を使用して構わないが、パニックの発生メカニズムとして「不安こそ解離である」という情動制御から産出された、心の科学に通ずる精神力動についても理解してもらいたいものである。

 

           新しい心の分析教室:様々な精神医学(精神分析)用語(Ⅰ)

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精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。

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