今回は、自由について取り上げようと思うが、一口に自由と言っても、その範囲は極めて広い。様々な領域において、様々な角度から議論できるであろうが、私が取り上げることのできる自由は、現象界の中でも精神現象に関する自由である。(つまり、自然現象における自由、生命現象における自由、社会現象における自由については、私以上に語れる人の方が多いので、これらの点については言及しない。)すでに私は、精神現象について語る上で、最も重要な三つの真実について紹介した。もう一度、それらを列挙すると、第一は、不二の法則である。苦悩と自由は、不二の法則に則っている。とらわれ(こだわり)のない心とは、どういう心であり、それはどのようにして得られるか?これらの疑問に対しては、さとりに関する考察の中で明らかにした。第二は、真性ホメオ・スターシスである。情動制御と認識形成とは、「持ちつ、持たれつ」の関係にある。つまり、情動制御がしっかりしていれば、認識の内容も正しく、得た認識が適切なものであれば、それは情動制御の確立に貢献する。第三は、覚醒度である。我々は様々な現象界の中で感じ、考える機能を有しているが、それらの機能は有化(主客分離)と呼ばれる。これに対して、感じ、考えた内容に秩序を与え、かつその秩序を解除して、感じ、考える以前の現象に戻す機能を、無化(主客融合)と呼んでいる。この有化と無化との関係、つまり、有化に対する無化の割合が、覚醒度である。この覚醒度を高めることによって、不二の法則や真性ホメオ・スターシスを得ることができる。

  ところで、私は「無化の機能こそ、自由の象徴である」と考えるので、この無化機能とは何か?それは、どのようにして得られるのか?について話しておくことにする。我々は絶えず様々な現象界を観察し、体験し、そこから発生した疑問に対して研究し、学習する。こうした一連の作業を通して、我々は精神を集中させることができるし、それによって思わぬ発見や発明に恵まれることもある。むろん、これらの作業はすべて脳によって行なわれるが、観察や研究や学習のレベルを上げるということは、神経細胞(ニューロン)同士の連絡網を密にしていくことを意味する。神経細胞には、多くの末端を有する樹状突起があり、それらがまるで成長する樹木のように伸び、他の神経細胞と連絡する。神経細胞は刺激すれば刺激するほど、そうした作業を活発化する。そうしてでき上がるのが、脳内ネットである。脳内ネットができ上がれば、刺激伝達も錯綜してくるが、どんどん伸びゆく末端同士が連絡するようになると、別々のルートから伝達された刺激がそこで衝突し、新たな興奮を引き起こす。その時、我々は「わかった!」と閃くが、その連絡網からさらに樹状突起が伸び、その末端がもっと別の樹状突起と接続すれば、より高度な内容の発見を可能にする。このように、すべての人の神経細胞の数は同じでも、その神経細胞を使うか、使わないかによって、脳内ネットの量だけではなく、脳の質もまた異なってくる。つまり、脳内ネットを作れば作るほど、閃きに恵まれるので、その人は賢くなれる。そして、まさにその閃きこそ、自由の源である。したがって、無化する能力をつければつけるほど、我々は自由になれるということである。

              新しい心の分析教室:ノート(Ⅵ)

お申し込みはこちら

精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。

お気軽にお問合せください

img33739.gif
linkbanner web search japan.gif