今、私は民間病院に勤めているが、その同僚である精神科医が、私に次のように言った。「精神科医療の実態を見る限り、先生の研究とはあまり接点がないので、先生の仕事は十年も二十年も早過ぎたのではありませんか?」と。確かに、その通りかも知れない。しかし、私の医学全体に関する大局観によると、これから「再生医療」の時代に入り、様々な身体的慢性疾患は「治癒」の時代に入りつつあるのではないか?もちろん、私の研究もそうした時代の流れを反映しており、再生医療の進歩と並行して、機能性精神疾患、特にその中でも重症人格障害や精神病の「治癒」の時代を準備したいと考えている。身体疾患の再生医療にしても、精神疾患の根治療法にしても、先ずは今までのような「維持」をモットーとする医療のあり方に疑問を抱き、次に全く次元の異なる新たな発想を持ち、さらにそうした新しい考えを方法論として提示しなければならない。すでに私はそうしたプロセスを踏んで、精神分析統合理論を作り上げたわけであるが、このページでは、これから「治癒」をめざそうとする人達に対して、感じ方や考え方の手順について少し解説しておくことにする。

  再生医療であれば、たとえば自分の万能細胞を用いて新しい臓器を作り出し、障害のある臓器と交換すれば、それが治癒を意味することは疑う余地がない。しかし、我々の心の母体である脳の交換は不可能である。脳梗塞や脳出血、それに認知症などの場合は、そうした病巣のある局部に対して、どれだけ治療が可能であるか?という場合においても、再生医療が可能かも知れない。しかし、それは脳全体の交換を意味するものではない。他方、重症人格障害や精神病のような機能性精神疾患の場合では、脳の局所的な損傷が原因ではなく、あくまでも環境を中心として構築される、脳内の刺激伝達経路に問題がある。つまり、正常な伝達経路と異常な伝達経路が存在する。これら両者の伝達経路の使用頻度、つまりその割合によって、心の正常と異常とが分かれてくる。したがって、機能性精神疾患では、あくまでも脳内の刺激伝達経路を変えることが、その「治癒」を意味する。こうした脳内の事情をしっかり理解することが、治癒をめざす上での第一歩である。その点、向精神薬は治癒に対して全く無効である。向精神薬は、伝達経路の途中における伝達物質の増減に貢献するが、どの伝達経路が使用されているのか?という点では選択性がない。つまり、向精神薬は「維持」のモットーである「鎮静化」に貢献するだけのものである。

              新しい心の分析教室:精神科教育の課題(1)

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精神分析統合理論は、革命的な精神分析理論である。心の健康と病気を定義付け、諸々の精神現象のメカニズムを解明している。その中でも、精神病である躁うつ病と統合失調症の成因を解明し、治癒をモットーにした根治療法を確立している。それによって、人類に課せられた最も大きな難問が解決されている。また、意識や自我意識の解明、「さとり」への道など、想像を絶する内容が含まれている。さらに、症例研究は比類なき圧巻である。精神医学や心理学の専門家だけではなく、心に関心を抱く知識人の方々にとっても必読書である。

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